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恋愛心理学

その“結婚願望”って本当? 上野千鶴子先生の女の生き方講座

2020/02/09

周囲で「結婚」の話題がかわされ始め、少なからずも結婚を意識し始めるMINE世代。では、女性が自立し、生きやすくなりつつある今、結婚とは一体何のためにするものなのか。そんな疑問を〝おひとりさま〟ブームの火付け役である東京大学大学院名誉教授の上野千鶴子さんに答えてもらいました。

結婚は誰でもするもの?

国勢調査によると、2015年の日本の未婚率は現在男性23.4%、女性14.1%。そう聞くと結婚という選択をしなくなった男女が増えたように感じるけれど、上野さんによると、実は人口の約98%が結婚していた“全員結婚社会”は、日本の歴史のなかでは1950年代から1960年代まで。高度成長期のほんの一瞬だけのことだそう。

「90年代からは、パラサイトシングル(社会人になっても実家を出ない独身者)が増加。現在、終身雇用や年功序列制度など昔のような安定した収入を期待できなくなったこともあり、親の家から出たくても出られないシングルが増えました。他方で、離婚率も上昇し、結婚の安定性や永続性の保証がなくなってしまったんですよね。
2015年の時点では15歳から64歳までの生産年齢人口の女性の64.7%は働いているというデータ(出典先:総務省国勢調査より、内閣府男女共同参画局HP)がある通り、女性の経済力が高まって、結婚しなくても生活ができるようになった。結婚する・しないかを選べる自由を持った女性が増える一方、働く女性の58%は非正規雇用で、親や夫に依存しなければ食えないという現実もあります」(上野千鶴子さん)

では、現代の日本社会では、何のために結婚を選ぶのでしょうか。

「母になりたいなら結婚する」がいちばんの動機に

「まず、何のために結婚するのかと考えたとき、それが親なのか世間体なのか、子どもを産むためなのか、と突き詰めてひとつひとつチェックしていくと、意外と明確な答えがなかったりする。ではなぜみんな結婚をしたがるのかというと、それは、『結婚は当然するもの』という社会規範が刷り込まれているからなんですね。

『自分は本当に結婚したいのか?』と胸に問うたとき、『この人とずっと一緒に居たい』、『この人の子どもを産みたい』と本当に思って結婚する女性がどれだけ居るのかな、と思います。

日本では婚外子が生きづらい社会制度になっているので、母になりたいという願望があるなら法律婚以外の選択肢がない、というのが現実。ですから夫が欲しいというよりも子どもが欲しいという欲求が、女性にとっての結婚の最大の動機となっていると思います」(上野千鶴子さん)

実際、欧米での婚外子出生率の割合は、2014年のOECDのデータでスウェーデンとフランスでは2人に1人以上、アメリカとドイツでは3人に1人以上、イタリアでも5人に1人以上の割合。対して日本の婚外子出生率は2.3%とわずかだというデータからも、出産=結婚となっている日本の状況がわかる。

承認欲求としての結婚願望もある!?

「それから、女性はいくら稼げるようになっても、男性に選ばれることで社会的な承認欲求を満たすという側面があります。承認欲求にはジェンダー差があって、男性は収入やステイタスで自己肯定感を得られるので、稼いでいれば自信を持てるけれど、女性はまだまだ、結婚しないと負け犬だという社会的な認識があるようですね。だから、生活保障という意味での結婚よりも、承認欲求としての結婚を求めているように思います。「男に選ばれない女」と思われたくない、という。

その辺りは、50年近く前のウーマンリブの女たちが『自分の値打ちくらい自分で決める』と言ってあんなにがんばって闘ってきたはずのに、実際は何も変わっていない。これはもう、結婚大好きだった団塊世代の呪いがかかっているんじゃないかと私は思っています(笑)」

結婚したその先にあるものとは?

そうして結婚を選択したあとには、どんなことが待ち構えているのだろうか。

婚活ブームと言われる一方で、そんなに努力して結婚生活を手に入れても、離婚率は上昇しているという皮肉な現実がある。シングルマザーは2015年で106万人、そのうち離婚シングルマザーは82万人、非婚シングルマザーは17万人とおよそ16%と急増している。(出展先:総務省統計研究所)

「離婚申調停の申し立ては、大半が妻側から。申し立て理由の一位は「性格の不一致」ですが、他に異性関係やDV、浪費など、夫側の問題によるものだという調査結果があります(出展先:平成29年度 司法統計 「婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所)。近年の傾向は子どもがいることや、子どもが小さいことが離婚の抑止理由にならないこと。たとえ離婚後に経済的に困窮しても、妻側がガマンしないという状況があります」

また、婚姻年数と幸福度を調べたデータ(出展先:https://csrda.iss.u-tokyo.ac.jp/panel/dp/PanelDP_078Wakita.pdf)では、女性が結婚して幸せを感じるピークは新婚のときで、あとは出産を機に下降を辿る一方だとも。結婚したら一生幸せな人生、なんて保証はどこにもないのだ。

「結婚をしてもしなくても、経済的に自立しておくことが大切。経済的に自立しておけば、どちらの人生も選べる自由がありますからね。それに、もしも結婚しないとしても、ひとりで生きていける資源=経済力があってシングルなのと、経済力がなくてシングルなのは全く違います」

結婚が生涯安定の保証とはならないこれからの時代、MINE世代に求められるのは、人生に責任を持つ意識と経済的に自立するタフさなのかもしれない。

Profile:上野千鶴子さん

東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長。日本における女性学・ジェンダー研究の第一人者として知られ、『おひとりさまの老後』(文春文庫)、『女ぎらい』(紀伊国屋書店)など著書多数。

Interview & Text : Moyuru Sakai llustration:Youmi Chen

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