【カリスマ書店員が推薦】雨の日に読んでほしい4冊とは?
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【カリスマ書店員が推薦】雨の日に読んでほしい4冊とは?

2018/07/06

「彼女が推す本は必ず売れる」と言われるほど、本への知識と愛に溢れ、多くの作家から信頼を寄せられる書店員、新井見枝香さん。半年で、一番面白かった本をたったひとりで選び、勝手に表彰してしまうという、新井さん自らが作った『新井賞』は、読書家の間ではとても有名。
受賞した本を陳列したところ、直木賞、芥川賞作品より売れてしまった! などという、業界を驚かす数々のエピソードを持つカリスマ、新井さんに、雨の日だからこそ読みたい4冊をおすすめしてもらいました。

新井さん自身も、雨降りの休日は、出かける気力が起きず、基本的には家でじっとしていたいタイプ。今回選んでもらったのは、新井さん自身何度も読み返しているお気に入りだそう。
雨の日の気だるい気分を吹き飛ばすポイントも含めて、好きな理由をお伺いしてきました。

すべては天気のせいだと思えば、気持ちが軽くなる

『うつヌケ~うつトンネルを抜け た人たち』 田中 圭一(著)KADOKAWA

「漫画家の田中圭一さんが書いた本なのですが、彼自身も実際にうつ病を患っていたのをきっかけに、うつを経験した人にインタビューをし、その経験を漫画にしてあります。その中に、大槻ケンヂさんなど著名な方もいるので、“あの人もうつだったんだ!”という驚きがまずあります。
うつになるきっかけも、うつを抜けた方法も人それぞれだから、自分がうつになったら参考になるし、まわりにうつの人がいるときの対処法にもなる。
天気が悪い日に、心が暗くなる人って本当に多いと思う。そこで田中さんが、“今日もし死にたくなっている人がいたら、天気のせいだから”っておっしゃっているんですが、そう言われたら、“いつか晴れる”って思えるじゃないですか。
人生において、うつっぽい時期って誰にでもあると思う。病気って思うと大ごとな気がするけど、それは天気のせいなんだって思うだけで、悪いループから抜け出せて、“雨だからしょうがないか”という気持ちになれる本です」

夏の太陽が待ち遠しい初夏に読みたい短歌

『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』 木下 籠也、岡野 大嗣(共著)ナナロク社

「歌人の木下龍也さんと、岡野大嗣さんの共著の作品なんですが、7月1日から、ある男子校生の一週間を、短歌で綴っているんです。共著だから、どう見分けるかっていうと、2文字上から始まっているのが木下さん、下がっているのが岡野さんです。わかりやすいストーリーがあるわけじゃないのですが、7月の男子校生に感じるきらめきを感じさせるんです。
読み進めるうちに、男の子のキャラが見えてくるんですが、それも、人によって受け取り方は全然違うと思うし、その自由さがよくて、想像がいくらでも広がる。雨の日に思うピーカンの夏は、とてもいいものに思えます。
この本は文字数は少ないし、彼らの短歌には、難しい言葉がまったく出てこないので、普段小説を読まない人でも読みやすいと思います。雨の日に、じっくり想像を膨らませながら、ゆっくりと読書をするのが楽しく、全部を読めば“なんかこれ、たまらなく好きだな”っていう短歌が見つかると思います」

一歩を踏み出したくなる、勇気をもらえる

『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に会いそうな本をすすめまくった1年のこと』 花田 菜々子(著)河出書房新社

「主役は、HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEという本屋で店長さんをやっている、花田菜々子さん。彼女が、結婚生活に行き詰まって辛い時期、どうにかして次に進もうと思って、出会い系サイトに登録するんですよ。それは次の相手を探したいってことではなくて、自分の知らない世界を知ることで、今の八方塞がりの状態を打破しようとする、小説仕立ての実録です。
サイト上のプロフィールで彼女は「今のあなたにぴったりな本を一冊選んでおすすめさせていただきます」と書いて、70人もの人と出会うことになるのですが、中にはもちろん変な人がいるわけで。そういう人に対して彼女が何をすすめるのか、というのも面白いんです。でも一番興味深いのは、出会い系サイトに登録するっていうその1歩。それだけで世界が広がっていく様子。彼女のもがきだったり、そこで会うはずのない人とつながって起こる出来事が、現状を変えていくのです。出会い系サイトを勧めるわけではないですけど、雨の日家にいるとき、これを読んだら“案外楽しそうかも”と興味がわくきっかけになるかなと思います」

無駄なく、簡単。雨の日に作りたくなる

『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』 有賀 薫(著) 文響社

「この本の良いところは、レシピ本にありがちな、手に入りにくい材料を使っていないところ。深夜のスーパーって、ほとんどものがないんですが、それでもさすがにこれはあるだろう、という食材を使っているところがすごく良いんです。私自身、一人暮らしを始めて1年半くらいで、そこから料理を始めていろんなレシピ本を買ってみたけど、全部その通りにやろうとすると大変で、なかなか続きません。
だけどこの本のレシピならごく最小限。例えば、サラダチキンとアスパラを美味しく食べるスープ、というレシピがあって、アスパラとコンビニで売ってるサラダチキンと、お塩と片栗粉だけで作るんです。
スープだから、スープの素とか入れなきゃって思うけど、実はサラダチキンからちゃんと旨味が出るので、お塩と片栗粉だけですごく美味しい。何度も作って食べたくなる味なんです。
雨の日に、料理する気力が起きなくて、どこかに食べに出かけるんじゃなくて、近所のスーパーやコンビニで材料を買ってスープを作ったら“今日は満足。いいことした”って思えそうです」

PROFILE:新井見枝香

三省堂書店 神保町本店の書店員。文庫担当。店頭やイベントでの独自の取り組みが注目を集め、紹介する本が「次から次へと売れる」と話題に。2014年に自ら設立した『新井賞』は、多くの作家からも関心を寄せられている。文庫解説や帯コメント、執筆活動など、幅広く活躍中。

『探しているものはそう遠くないのかもしれない』新井見枝香(著)秀和システム

新井さん初のエッセイ本。会社員としての日常や、独身女性の身の周りに起こるあらゆることを、心地良い文章のリズムで綴る。声を出して笑え、雨の日をポジティブに過ごせる一冊。

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