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間違いやすい『参りました』の使い方。伺いましたとの違いは?

2020/03/11

『参りました』は、ビジネスシーンや時候の挨拶で多く用いられる謙譲表現です。行く・来る・弱るなどの意味のほかに、補助動詞として文全体を丁重にする役目があります。『伺いました』とは、似ているようで使用できる場面が異なる点に注意しましょう。

「参りました」の主な意味とは

「参りました」は、さまざまな意味を持つ言葉です。特に、ビジネスシーンでは相手にへりくだって使う謙譲語として用いられることが多いため、正しい使い方を覚えましょう。

行く、来る

参りましたは、謙譲語の動詞『参る』の連用形に、丁寧語の助動詞『ます』の過去形が結びついた言葉です。

参るは自分が『行く』ときと、相手が『来る』ときの両方の意味を持ちます。どちらの意味であるかは状況から判断しましょう。

▼使い方の例

・(自分を呼び出した上司に対して)ただいま参りました。(来るの謙譲語)
・(自己紹介で)神奈川県から参りました、田中です。(来るの謙譲語)
・(話の聞き手に対し)日曜日、久しぶりに姉の家に参りました。(行くの謙譲語)

謙譲語は自分をへりくだって相手を高めたり、聞き手に丁重さを表したりする表現です。参るは、行くの謙譲語にあたります。

例外を除き『参る』の動作の対象は相手ではなく『自分』であることを覚えておきましょう。

弱る

参るは困難を抱えているときや、心身が弱っているときなどに使います。

相手(基準)に対して、自分の力量が追いついていないときに「身が持たない」「倒れかねない」という意味合いで使われる表現です。

▼使い方の例

・精神的にも肉体的にも参りました。
・彼のあの態度には参りました。
・彼は病院に入院して数日で参ってしまった。
・いやはや、参りました。台風のせいで水道をひねっても出るのは泥水ばかりです。

謙譲語のため、同僚や友だちに対してはもちろん目上の人の前でも問題なく使えます。

参るには『降参』や『負ける』の意味もあるのはご存じでしょう。将棋や囲碁では、投了するとき、自ら負けを認めて「参りました」と相手に伝えます。

誰かの行為に自分が根負けしてしまったときも「私では応えられない」といった意思を示せるでしょう。

行く、来るという意味での使い方

行く・来るの意味で使うときに気をつけたいのが、参るの動作の対象です。間違いやすい表現を具体例を示しながら説明しましょう。

目上の人に使える

参りましたは自分の動作をへりくだり相手を高める謙譲語のため、目上の人や上司に使えます。

参りましたを日常的に使うのに抵抗を覚える新入社員もいますが、立場が同じ同僚でない限り、呼ばれたとき「ただいま参りました」と言うのは、会社における敬語としては一般的です。

▼使い方の例

部長が探していたと伺いました。遅くなってしまい、申し訳ありません。ただいま参りました。

上司や目上の人に対して「来ました」「行ってきました」というのはぶしつけでしょう。

取引先を訪問したときや自己紹介のときに「〇〇商社から参りました」と伝えれば、相手に好印象を与えます。

相手の行動に対しては使わない

参るはもともと『まゐいる』と表記し、神社や高貴な人々がいる場所(宮中)に自分が参上することが原義です。そこから、動作の及ぶ相手を敬う表現として用いられるようになりました。

謙譲語である参る・参りましたは、自分の動作に対して使い、敬意を示すべき相手の行動に対しては使いません。

▼間違った使い方→正しい使い方

・お客様が参られました→お客様がお越しになりました。
・こちらに参る際はお電話ください→こちらにいらっしゃる際はお電話をください。

ただし、例外として敬意を払うべき相手がいるのを前提に『自分以外の身近な人の動作』または『事物』に対しても使われることがあります。

▼使い方の例

・(顧客に対して)係りの者が参りました。
・(社長に対して)お迎えのタクシーが参りました。

「伺いました」との違い

行く・来るの参りましたは『伺いました』と同じように使われます。どちらも敬語で会話の中では頻繁に使われますが、厳密には使える場面が異なります。

どちらも敬語だが使える場面が異なる

『伺う』には行くや参上するなどの意味があり、自分をへりくだり、相手を高める謙譲語という点では参ると同じです。

日本語においては、参るは『謙譲語Ⅱ(丁重語)』、伺うは『謙譲語Ⅰ』に分類されています。

参るは『聞き手』への配慮から自分の行為をへりくだる謙譲語なのに対して、伺うは自分から相手または第三者の場所に行くときに『行く先』の相手を高める謙譲語です。行く先に敬意の対象がいなければ用いることができない点に注意しましょう。

使い方例

参ると伺うの使い方の違いを確認してみましょう。

〇夏休みは、軽井沢に参りました
✕夏休みは、軽井沢に伺いました

軽井沢という場所は、単なる地名であって敬意の対象ではありません。相手を高める伺うを使うのは不自然です。
参るを用いれば自分を低くして『話の聞き手』に敬意を払えます。

〇週末は、社長の別荘に参りました。
〇週末は、社長の別荘に伺いました。

一方で、文意から行く先に敬意を払うべき相手(社長)がいるとわかるときは、伺うを使っても間違いではありません。

〇土曜日は、祖父の家に参りました。
✕土曜日は、祖父の家に伺いました。

ただし、身内に対して話す際には、年齢関係なく敬意を払う表現は使わないのがルールです。
行ったという行為に対して相手にへりくだって報告する目的で使います。

漢字とひらがなはどちらを使うの?

参るは『まいる』とひらがなで表記されることがあります。
表記が違うだけでなく意味や働き自体が異なるため、文書に記すときはしっかりと使い分けるようにしましょう。

補助動詞として使いたい場合はひらがな

「〇〇に参りました」のように、行く・来るの謙譲語として用いる場合は漢字表記を使います。

「精一杯努力してまいります」のように『動詞+まいる』で使う場合は、ひらがなで表記することが一般的です。

ひらがな表記のまいるは『補助動詞』とよばれ、動詞の後ろについて付属的な意味を添えるものです。前の動詞に謙譲の意味合いを加えられます。

▼使い方の例

・これからも精進してまいりますので、ご指導のほどよろしくお願いいたします。
・ご指摘ありがとうございます。日々製品の品質向上に努めてまいります。

同じような使われ方をする補助動詞には『いたします』や『ください』『いらっしゃる』などがあげられます。

状況を丁寧に言うときや時候の挨拶などに

手紙で時候の挨拶を添えるときや状況を丁寧に書き表すときには、補助動詞のまいるが用いられます。

▼使い方の例

・梅のつぼみがほころび、いよいよ春めいてまいりました。
・新緑が目にまぶしい季節になってまいりました。
・山肌が鮮やかな朱色に染まり、秋の気配が深まってまいりました。
・冷え込みが激しくなってまいりましたが、どうぞご自愛くださいませ。

親しい友人への手紙では堅い表現を使う必要はありませんが、恩師や目上の人への手紙には、丁寧な言葉遣いや月ごとの定型句を取り入れると格調がぐっと上がります。

自分がしてきたことに使うこともある

自己紹介などで、自分がしてきたことを相手に述べ伝える際にも補助動詞のまいるが用いられます。

▼使い方の例

・大学では○○の研究を専門に学んでまいりました。
・海外での経験を生かして、広い視野を持って取り組んでまいります。

相手の年齢や身分が自分と同格であれば「〇〇してきました」で問題ありませんが、相手が目上の人である場合は「〇〇してまいりました」「〇〇してまいります」と謙譲表現を使います。

ビジネスシーンでは、会話はもちろん、文書(メール・手紙)の中でもよく用いられる表現です。使い方をしっかり覚えておきましょう。

面接や履歴書の自己PRなどに

面接時は、面接官や企業に対して謙譲語や尊敬語などの敬語表現がいかに上手に使えるかがポイントです。
特に、自己紹介や履歴書の自己PRでは、正しい言葉遣いができる社会人であるかがチェックされています。

▼使い方の例

・前職では、顧客を開拓する営業業務に従事してまいりました。
・エリアマネージャーとして、人材の育成に注力してまいりました。
・今後も社業発展のために尽力してまいります。 

補助動詞のまいるを適切に使い、相手を尊重した丁寧な表現を心がけましょう。

まとめ

行く・来る・弱るなどさまざまな意味を持つ参るは、日常でも比較的なじみの深い謙譲表現です。

使い慣れているつもりでも伺うと参るの使い分けを混同してしまったり、敬うべき相手の動作に謙譲語を使ってしまったりすると、ビジネスシーンで恥ずかしい思いをしてしまうでしょう。

敬語表現を使うべき人が動作の相手なのか話の聞き手かを考えるだけで、使い分けははっきりします。

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