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結婚はしなきゃいけない?/川上未映子さんが伝えたいこと

2019/11/01

結婚するか、しないか。子供を産むか、産まないか……私たちが向き合う大問題に正面から向き合った長編小説『夏物語』が話題の川上未映子さんにMINEが初インタビュー。
仕事、恋愛、パートナー選び、結婚、出産、子育て。自分らしく生きて行くために私たちが心得ておきたいこととは?

恋愛、結婚、出産は全てバラなんです

−仕事をしながら恋愛して、結婚して、母になる。最近は、そこまでが女性の理想の人生という風潮があると思うのですが、実現するにはどうすればいいと思いますか?

川上未映子さん(以下、川上さん):仕事、恋愛、結婚、出産……。日本にある既成の物語では、これらは全てセットだと思われていますよね。でも、本当はすべてバラです。もちろん緩やかに結び付いてはいますが、それぞれ別の次元のものなんですよね。
これらを両立させながら、破綻させずに墓場まで持って行ける人は、才能や環境に恵まれた運のいい一部の人だけです。そんなスーパーウーマン“じゃなきゃいけない”なんて、目標にする必要はないですよ。

−全て出来てこそ“勝ち”のようなムードがありますが、確かに、別物。理想の恋愛を叶えてくれる相手と結婚をしたら、浮気や浪費で地獄を見た人も少なくないですよね。共働きなのに家事・育児を丸投げされて、悩んでいる人も多い。

川上さん:人生を冷静に考えることが必要なのです。まず、何よりも女性に大切なのは、自尊心と仕事。誰に何を言われても自分を信じられる自尊心と自分で使えるお金は、身を守ってくれますよ。

対等に生きる意識のある人でないと、パートナーにしてはダメ

−社会的に自立していることが重要なのですね。

川上さん:MINE世代だと、これから結婚や出産で新しい環境に突入する人もいると思うけど、実家が死ぬほど太い人とかは別として、なんとか仕事を続けることを考えてほしい。これは、他人の借金の保証人にならないことと同じくらい大事なことだと思います。

−自分も仕事をしながら結婚生活を続けるとなると、相手の家事スキルも重要ですね。

川上さん:そうすると、料理教室で相手に出会うくらいがいいかもしれないよね。私も、パートナーに家事スキルがあることはマストだと思っています。

そして、頭が柔らかく環境の変化に対応でき、対等に生活を作っていく意識のある人としか結婚してはダメ(笑)。例えば、交際中に少しでも偉そうなそぶりを見せる人だと、人生が“詰む”ことも。パートナーがモラハラ化すると、本当にしんどいことになります。

−対等に生きられる男性以外とは、結婚しない方がいい?

川上さん:もちろんです。いずれかの性別がほかの性別より偉いとか、自分が相手より上だとか、収入の少ないほうが多いほうを尊重するべきだとか、そんなふうに思っている人と一緒に暮らせますか? 無理でしょう。
20~30代の方の経済的な不安には大変なものがあり、さらに昇給も見込めないケースも多々あると聞きます。ともに働いて、夫婦で協力しないと生活を維持できない、そんな時に夫がモラハラだと、本当に大変ですよ。女性の自己犠牲が前提の“昭和モデル”の夫婦関係はとっくに終わっているんです。そのことに女性も男性も気づかなければ。

そもそもなんで結婚したいんだっけ?

−とはいえ、やはり“結婚したい”という気持ちはありますよね。婚活に苦しんでいる人も少なくない。

川上さん:そもそも、なんで結婚をしたいんだろう? まずは、そこです。世間体や(親や友人からの)外圧は無視して考えてほしい。ハイスペックな男性と結婚することをよしとする“勝ち組のルール”も、今の時代には合わない。それでも、漠然と“結婚したい”と思うなら、思い込んでいる結婚のイメージを洗い出した方がいいかもしれませんよ。

例えばTwitterで“離婚”と検索すると、それはもう結婚生活のリアルが出てくる。“子育て 限界”もチェックしてみるといいかも。

−もしかして、これからの時代は結婚をしないほうがいい?

川上さん:そうではなく、“婚活”に苦しむ人に、いま自分の想像している“結婚”が、目的になっていないかどうかを考えてほしいんです。もちろん何事も自分で経験して知るしかないのですが、結婚がゴールということは絶対にない。私は現在43歳ですが、周囲にシングルマザーが増えていて。でも、離婚して後悔した人はいません。『仕事もきついし、お金も減ったけど、今が最高』と言っている人が多いですね。

−ただ、出産するならある程度リミットがありますよね。結婚せずに子供を産むにもリスクが。

川上さん:私の小説『夏物語』は、38歳の主人公・夏子がパートナーなしの妊娠・出産を目指すという物語で、“子どもをどうするか問題”のすべてが書かれています。例えば、一夜限りの関係の男性や、一年で離婚する男性との子どもを作るのとは、何が違うのか。なぜ親になりたいか、親になるのはどういうことか、どういう行動をしたら、子どもが産めるのか。そもそも、子どもが欲しいなと思う気持ちって何なのか。お金はどうするのか──この作品に、具体的な現実が書いてあるので、是非読んでみてほしいです。

30代に必要なのは、成長、審美眼、知性

―いっぽうで、川上さんは、結婚、出産、育児を経験しながら、多くのお仕事をこなして作品を発表してらっしゃいます。それは小説家という“天職”に就いているからだと思うのですが、仕事と人生の充実度は関係していますか?

川上さん:でも、私が小説を書き始めたのは読者の皆さんと同じ年代の30歳だったんですよ。幼いころから表現をしたいという気持ちは自分のなかにあったけど、さまざまな仕事をし、多くの失敗もした。その過程で経験値が上がって、気づけばこの道を歩いていたという感じ。だから、実体験からも30代は若い! 経験をするために挑戦を続けてほしいです。

−自立するためには、仕事を手にすることが大切ですもんね。

川上さん:だからといって、苦労を勧めているわけじゃないんですよ(笑)。恐れないでリスクをとった方がいい、ということ。迷ったら難しい道を選ぶと、そこにチャンスがあることが多いです。そうならなかったとしても、自分が成長して、変わっていける。それが自分だけの“財産”になるから。
仕事に限らず、料理、手作り、絵、音楽……なんでもいいので、自分のフィールドを持っておくと充実する。漠然と生きていていると、老いてから空しくなるはずです。

−何があっても自分の人生を生きろ、と。

川上さん:皆さんに声を大にして伝えたいのは、『人間万事塞翁が馬』ということ。幸福も不幸も転々として予測できないんです。成功や名声といった、外部にその評価を委ねているものはなくなりますが、絶対になくならないのは、自分で経験して得た成長、審美眼、知性です。
SNSに良くありがちなフォロワーといいねが多い方が“強い”というカードの切り合いは本当に空しい。そうならないためにも、これからの30代は知性が本当に大切になると思う。自分にとって何がフェイクで、価値があるものかがわかってくる年齢だからこそ、生身の経験を積んでおく。そのうちに、“自分の専門家”になれば、天職に出会えるはずですよ。

Profile:川上未映子

1976年大阪府生まれ。2008年『乳と卵』で芥川賞、’09年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞、’13年『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞などを受賞。17年に「早稲田文学増刊 女性号」で責任編集を務める。代表作は『ヘヴン』『あこがれ』『ウィステリアと三人の女たち』など。2012年に男児を出産。

『夏物語』¥1,800/文藝春秋
小説家をめざして作品を書き続ける、38歳の夏子。書くことを仕事にする理想の人生を手に入れるが、「自分の子どもに会いたい」と強く思うようになる。未婚、交際相手もいない夏子は、どのような手段をとるのか。出産を「親の身勝手」だと言う女性、シングルマザー、父親のことを知らない男性……多くの人とのかかわりを通じ、「子どもを産む」ことを考え続ける物語。

Photo:Masahiro Yamamoto Hair&Make-up:Mieko Yoshioka Text:Aki Maekawa Editor:Terumi Kobayashi

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